「長野県社会福祉協議会による社会的養護出身の若者を支える取り組み」リポート|JANPIA|インターン生活動日誌|

「長野県社会福祉協議会による社会的養護出身の若者を支える取り組み」リポート|JANPIA|インターン生活動日誌|

2023年3月よりJANPIAで活動を始めたインターン生の「活動日誌」を発信していきます。第2回は、21年度通常枠の実行団体である社会福祉法人 長野県社会福祉協議会〈コンソーシアム申請〉(資金分配団体:公益財団法人長野県みらい基金)の取り組みについてのリポートです!




JANPIAにてインターン生として活動しているSです。
今回は長野県社会福祉協議会にお邪魔し、社会的養護の取組についてお話を伺ってきました。
その内容をレポートします。

1. 長野県社会福祉協議会とは

長野県社会福祉協議会(以後、長野県社協)は、昭和26年(1951年)に設立された団体で、長野県における社会事業や社会福祉を目的とする事業の健全な発達及び、社会福祉に関する活動の活性化により、地域福祉の推進を図ることを目的とした団体です。

現在では、「ともに生きる ともに創る 地域共生・信州」を目標に、様々な個性や多様性を持つ人々が人のあたたかさに包まれる地域の中で安心して暮らすことができ、その人らしい居場所を出番がある地域共生社会の実現を目的とした様々な取り組みを行っています。

長野県社協は公益財団法人長野県みらい基金が実施する21年度通常枠事業「誰もが活躍できる信州「働き」「学び」「暮らし」づくり事業」にて事業申請し、「社会的養護出身の若者の支援」を行う、実行団体として採択を受け活動を行っています。

2.「社会的養護出身の若者サポートプロジェクト」を始めた経緯

今回は長野県社協の数多くある取り組みの中から、「社会的養護出身の若者サポートプロジェクト」について。長野県社協常務理事の竹内さん、まちづくりボランティアセンター所長の長峰さん、若者支援担当職員の傳田さん、専門員の横山さんにお話を伺って来ました。

写真(執務室で椅子に着席し、説明を行う3名の様子)

(写真:左から傳田さん・横山さん・長峰さん)

2-1. 「社会的養護」って?

「社会的養護」という言葉は聞き馴染みのない言葉ですが、こども家庭庁の定義によると「保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当ではない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うこと」とされています。

長野県には現在14か所児童養護施設が存在し、約400名近くの児童がそこで生活をしています。

2-2. なぜ社会的養護出身の若者の支援を始めたのか?

取材前から疑問に感じていた、社会的養護出身の若者の支援を始めるにあたった経緯をお尋ねしたところ、その経緯は意外なものでした。

写真(執務室の椅子に着席し、説明するまちづくりボランティアセンター所長の長峰さん)

(写真:長峰さん)

長野県社協は、長野県を襲った台風19号の災害を受けて、20年度に休眠預金活用事業でシェアハウスに人を呼ぶ事業を開始しました。そのシェアハウスにコロナで収入が減った若者から入居の相談があり彼らの事情を聞くことに。すると若者のなかでも特に社会的養護出身の若者が直面する困難が浮き彫りになり衝撃を受けたそうです。

現行の法制度では、社会的養護に該当するのは「児童福祉法」の範囲内の18歳まで。18歳を超えると公的な支援が一切途切れてしまい、社会的養護施設を出た若者は十分な支援も受けられない中で社会に参画しなければならないという現状が存在するとのこと。

これまで、社会的福祉の分野であまり焦点が当てられてこなかった、「社会的養護出身の若者」を支援する事業を始めることになったそうです。

2-3. 社会的養護出身の若者の支援を始める上での課題

社会的養護出身の若者の支援を始める上で、長野県社協が抱えていた課題は、専門性やノウハウが不足していたということでした。

そこで養護施設で長年勤務し現場の実情に精通している傳田さんをチームに加え、児童養護施設への働きかけを始めたそうです。

写真(執務室で説明する、まちづくりボランティアセンター 若者支援担当の傳田さん)

(写真:傳田さん)

傳田さんは養護施設側が抱えている課題についてこう語って下さいました。
「養護施設の園長さんなどは、外部との交流がなく、行政などの支援の情報などが耳に入ることが少ない。また、自分たちでなんとかしようとする意識が強く、同じ地域にいても社協などとの連携もなく、どうしてもサポートの幅が狭くなってしまう」

このような課題認識の下、様々な地域の社協やNPO、企業を巻き込んだ支援の枠組みについて説明して下さいました。

3. 「長野県社会福祉協議会」の取り組み

ここからは長野県社協が社会的養護出身の若者に対して行っている、「まいさぽ」を通じた就労支援、「どこでも実家宣言」について取材した内容を紹介します。

3-1. 「まいさぽ」について

長野県社協では、既存の事業である「まいさぽ」と児童養護施設との連携事業を進めています。
「まいさぽ」とは、相談支援員や就労支援員が相談者との面談を通してニーズを把握し、相談者の状況に応じた支援が行われるよう、共にサポートプランを作成し、様々な支援につなげる事業です。
この「まいさぽ」の就労支援の中の「プチバイト」に児童養護施設の若者をつなげるという取り組みが、長野県社協が児童養護施設との連携で進めている事業内容です。

プチバイトとは、社会福祉法人経営者協議会の会員から協賛を募り、地域の協力事業所で職場体験したまいさぽの相談者に1時間800円の給付を行う事業です。職場体験きっかけとして社会との関係をつなぎ直し、就労の機会を開いていくことが目的とされています。

児童養護施設にいる若者は、「人(大人)が苦手」「コミュニケーションが苦手」といった人や社会に対しての恐怖心などが強く、成功体験が少ないという課題を抱えている人も少なくないそうです。

そんな彼らに対して、「プチバイト」という試験的な形で若者が抱える課題に対して理解のある事業者の元で就労体験を積むことのできる枠組みを用意したことには効果があったと傳田さんは語ります。

実際に「プチバイト」に参加した高校3年生のKさんは、以前務めていたバイト先はどこも長く続かず、社会参画に苦手意識を感じていた状態から、就労先での業務に楽しさを覚え、その会社への就職を希望するようになったそうです。

3-2. 「どこでも実家宣言」の広がり

傳田さんが紹介して下さった長野県社協が取り組んでいるもう一つの事業として、「どこでも実家宣言」があります。

「どこでも実家宣言」とは、親の支えがなく社会に参画する若者にとって、市町村社協が「実家」のように安心できて頼ることができる場所として機能するようにという目的で新しく傳田さんたちが始めた事業です。

長野県にある各市町村の社会福祉協議会に働きかけ、どの社協にも下記の写真のような「どこでも実家宣言」の設置を目指しているそうです。現在、「どこでも実家宣言」に参画している長野県内の社協は33件(2023年8月29日現在)に及び、地域・エリアを超えてこどもや若者をサポートする環境の整備にむけての取り組みを進めています。

4. さいごに

今回インタビューをさせて頂いた長野県社協での取り組みの中で痛感したのは、地域として社会参画に課題を抱える若者などをサポートしていく体制の重要さです。
「どこでも実家宣言」のような若者が安心感ももって頼ることのできる暖かさを感じさせる取り組みや、傳田さんの「成功体験を積ませてあげる必要がある」といった言葉に表れていたような、地域として若者が一歩ずつ前に進んでいける環境をつくること。
そういった「ソフト」な働きかけの重要性を今回の取材で学ばせて頂きました。

■ 事業基礎情報

実行団体

社会福祉法人 長野県社会福祉協議会〈コンソーシアム:幹事団体〉

〈構成団体〉
・長野県児童福祉施設連盟
・株式会社レントライフ
・特定非営利活動法人 NPOホットライン信州

事業名社会的養護出身の若者サポートプロジェクト
活動対象地域
長野県内全域
資金分配団体
公益財団法人 長野県みらい基金
採択助成事業2021年度通常枠

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