業務改善PTのはじまり
休眠預金活用事業においての業務改善の必要性を議論したはじめの機会は、2020年12月。2019年度から事業を開始している資金分配団体22団体の代表者の方たちとJANPIAの役員との意見交換会が実施されたときでした。休眠預金の活用によって生まれたよい事例をご紹介いただく一方で、「報告書類が多い」「システムが使いにくい」「JANPIAとのやりとりも大変なうえに、さらに実行団体とのやりとりもあり、相当な時間をとられる」など、業務負荷に関するご意見を多数いただきました。
また、同時期に実施された内閣府休眠預金等活用審議会ワーキンググループによる資金分配団体、実行団体のヒアリングにおいても、同様に業務改善の要望が寄せられました。
このような背景から、業務改善PTを本格的に立ち上げることになりました。そこで、資金分配団体の方々へ業務改善PTの開催をお知らせするとともに、有志の方からのご参加を募ったところ、13の資金分配団体、20数名の方が参加いただくことになり、2021年1月には第1回目の会合を実施。参加いただく方々は、立場も課題意識もそれぞれちがうため、まずはいったん全体を整理するためにアンケートをとり、そもそもどういう動機でこのPTに参加したのか、このPTで実現したいことはどんなことなのか、みなさんの思いを確認しました。
アンケートでは「実行団体が活動しやすく、JANPIAと資金分配団体による有効で効果的な伴走支援のあり方などを検討協議し、そのしくみや制度の構築を期待したい。 具体的には、テーマごとでこれまでのしくみや取組みを検証し、課題を整理して、改善する作業を進めることかと思います。」など、有志の方の熱い思いが寄せられるとともに、それぞれの課題意識を確認することができました。業務改善の対象は事業運営の全ての領域にまたがっていたため、2月からは主要テーマで5つのチーム「制度・評価・資金管理・契約/規程類・活動管理」を作り、課題の洗い出しと改善の方向性の検討を開始しました。
〈参加13団体(五十音順)〉
公益財団法人 お金をまわそう基金/公益財団法人 佐賀未来創造基金/一般財団法人 社会変革推進財団/公益財団法人 信頼資本財団/公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン/一般財団法人 中部圏地域創造ファンド/公益財団法人 長野県みらい基金/公益社団法人 日本サードセクター経営者協会/公益財団法人 パブリックリソース財団/公益財団法人 東近江三方よし基金/特定非営利活動法人 ひろしまNPOセンター/認定特定非営利活動法人 まちぽっと/READYFOR株式会社
全体会合で各チームの検討状況を共有
それぞれのチームが4~5回の会合を開き、活発な意見交換を行ったうえ、5月24日に検討状況の共有のための全体会合を開催されました。チームで洗い出した課題・検討内容について、各チームの代表者から発表が行われました。
5月25日業務改善PTの様子
■活動管理関連検討チーム
<参加人数、実施回数>9名、計4回
<検討内容>日々の実務面全般、月次ミーティング、月次報告、関連システム改善など
<洗い出した主な課題>
・システム入力の意義の明確化
・システムの複雑な入力画面の解消とサポート体制整備
・業務量のスリム化
・休眠預金活用事業における伴走支援 等
活動管理関連検討チームが洗い出した課題をグルーピングし整理した図
■資金管理関連検討チーム
<参加人数、実施回数>5名、計5回
<検討内容>収支管理簿、日々の資金管理、年度末精算等、関連システムの改善など
<洗い出した主な課題>
・助成金と自己資金を指定口座での一元管理の課題
・月次の収支管理簿と口座残高との突合の簡略化
・自団体の経理処理と異なり煩雑
・各種精算様式簡略化 等
■評価運営関連検討チーム
<参加人数、実施回数>6名、5回
<検討内容>社会的インパクト評価手法・進め方、評価指針など
<洗い出した主な課題>
・書類作業過多による疲弊、やらされ感
・フォーマットが画一的で団体に合わせた自由度、多様性がない
・「評価の本質」が伝わるような研修・伴走支援の必要性
・マニュアル・書類だけではなく、様々なケーススタディの共有や学びあいの創出 等
■契約・規程類の整備関連検討チーム
<参加人数、実施回数>4名、5回
<検討内容>資金提供契約書類、実行団体のガバナンス・コンプライアンスの体制整備のあり方など
<洗い出した主な課題>
・実行団体のガバナンス・コンプライアンスの体制整備への負担
・必要最低限充足すべき水準を用意すべき
・組織規程の整備の目的を明確にする
(体制整備が優れた組織だから、社会的インパクトを出せる組織とは限らない) 等
■制度関連チーム
<参加人数、実施回数>7名・4回
<検討内容>4検討チームでの検証・整理・提案などを踏まえ、制度面への影響のある要素は継続的に検討・整理
<洗い出した主な課題>
・休眠預金活用事業制度全体について
(資金分配団体の育成、3層構造での資金配分、自己資金確保への多様性、公募の在り方など)
・プログラム・オフィサーの人件費の妥当性や役割の明文化
・緊急助成支援・災害支援事業の助成事業は、通常の仕組みの在り方とは区別が必要
・出資・貸付による資金活用の可能性 等
業務改善PTのこれから
全体会合では、上述のとおり、様々な課題が挙げられました。今後、各検討チームから出てきた課題について、まずはJANPIA事務局で「すぐに改善が出来る課題」「システムの改善を要する課題」「制度面で中長期的に検討・調整を必要とする課題」に整理を行っています。
その後、業務改善PTとも連携の上、すぐに改善対応が可能なものから順次改善を行っていくとのことです。また制度などの、息の長いテーマについては、今後も継続して資金分配団体をはじめとしたこの制度の関係者と検討を行っていくとのことです。
最後に、5月24日 全体会合に出席したJANPIAの二宮理事長のコメントをご紹介します。
目指すべきは社会課題の解決です
今回の業務改善PTに関しては、資金分配団体20数名の方に入っていただき、5つのチームを作り、論議を繰り返し、解決すべき課題を明確にしていくという形で進めていただきました。そういった活動に対して私自身も大変期待を持っておりましたし、また、皆さま方のご努力に敬意を表している次第です。現在、まだまだ過程であり、いただいて整理した課題をこれからどう改善するかということが大事なのですが、非常に大切で大きなステップだったと思っています。
皆さまのお話の中で「本質」という言葉が繰り返しございましたが、私自身が理想とするのは、「本質において一致」「行動において自由」「全てにおいて信頼」という関係性です。本質が根幹において一致さえしていれば、それを実現していくための行動というのは多様性があっていいわけですから、ある意味少し広めにとっておく。そして根幹にあるのは、「全てにおいて信頼」であると。これが理想とすべき姿ではないかと思っております。
休眠預金活用事業は「壮大な社会実験」と言われるくらい、困難も伴うチャレンジングな挑戦です。多くのステークホルダーの方々が参加し、行政でも解決しない、間に落ちてしまっている社会課題を解決しようと同じ方向を向いている。つまり、本質は一致しているものと思います。ただ、立場によって背負うものの強弱が違う。だからこそ、しっかりと話し合っていくことが大事だと思います。
あいまいにするとそこで終わってしまいますので、あいまいにしないで、ステークホルダー間で納得のある結論を導き出すことが大切だと考えます。もちろん二者択一のものではないですから、どちらがいいとか悪いとかではなく、互いに納得感のあるバランスのとれたものとなるのではないかと思っています。今、その過程を着々とたどっているものと思っています。たくさんのご意見をいただきまして、これを整理し、また皆さま方と論議し、目指すべき「社会課題の解決」にいたる道筋をしっかりたどっていきたいと思っています。
我々JANPIAは、「連携と協働」ということを根幹においています。皆さま方のご理解とご支援をいただきながら、ともに努力し活動していくことで、理想としているものを実現できればと思っています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
業務改善PTの今後の経過や結果は、JANPIAのウェブサイトでも公開されるとのことですし、この休眠預金活用事業サイトでも取り上げてまいります。資金分配団体と共に取り組むよりよい休眠預金活用事業を目指した取り組みに、今後も注目していきます。