教えて!「休眠預金活用」っていったい何? 事務局長に聞きました

教えて!「休眠預金活用」っていったい何? 事務局長に聞きました

近年、「休眠預金」という言葉を見たり聞いたりする機会が増えています。2019年から休眠預金等活用制度による助成事業が始まっていますが、なんだかよくわからない…という方もいらっしゃるでしょう。 休眠預金等活用制度の指定活用団体である一般財団法人日本民間公益活動連携機構(以下、JANPIA)の鈴木均事務局長に、休眠預金活用や制度について、詳しく話を聞きました。 (休眠預金活用事業サイト編集部)※2022年4月末のデータに更新しました。(2022.10)


Q.「休眠預金」とは何なのでしょうか?

10年以上入出金のない預金のこと

国民が持っている銀行口座の中で、10年間出し入れのない預金のことを「休眠預金」と呼んでいます。休眠預金は、払い戻し額を差し引くと毎年約700億円程度発生すると言われています。
2018年1月1日に「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る活用に関する法律」(休眠預金等活用法)が施行され、2009年1月1日以降10年以上入出金などの取引が行われていない預金等は預金保険機構に移管され、民間公益活動の促進に活用されることになりました。

Q.自分の預金が休眠預金になったら、もう預金を引き出すことはできないの?

手続きをすれば、休眠預金は引き出せます

休眠預金になった後でも、その預金のある金融機関で所定の手続きを行えば、預けていたお金を引き出すことができます。引き出し手続きには、通帳や取引印、本人確認書類などが必要です。具体的な手続きについては、それぞれの金融機関のウェブサイトや問い合わせで確認してください。

Q.「休眠預金活用」とは、具体的にどんなことに活用するのでしょうか?

社会的な課題解決のための公益活動を行うNPOなどの事業資金として助成します

さまざまな社会課題を解決するための民間活動に、休眠預金を財源とした資金を活用することが、休眠預金等活用法に定められています。社会課題としては、いわゆる社会的弱者の支援や地域の活性化など、優先的に解決すべき課題として次の3つを挙げています。
●子ども及び若者の支援に係る活動
  ・経済的困窮など、家庭内に課題を抱える子どもの支援
  ・日常生活や成長に困難を抱える子どもと若者の育成支援
  ・社会的課題の解決を担う若者の能力開発支援
●日常生活または社会生活を営む上での困難を有する者の支援に関する活動
  ・働くことが困難な人への支援
  ・社会的孤立や差別の解消に向けた支援
●地域社会における活力の低下その他の社会的に困難な状況に直面している地域の支援に関する活動
  ・地域の働く場づくりの支援
  ・安心・安全に暮らせるコミュニティづくりへの支援

これらの支援活動の多くは、主にNPOがさまざまな工夫を凝らして行っています。そうした民間公益活動を行うNPOなどの団体(実行団体と言います)に助成する資金の原資として、休眠預金を活用しています。また、SDGsとの親和性も高く、「誰ひとり取り残さない持続可能な社会」作りに貢献します。

休眠預金を活用した事業のシンボルマーク

Q.日本以外にも休眠預金を活用している国はあるの?

外国にもある制度で、日本では民間団体が主体的に連携し休眠預金を活用

いち早く休眠預金基金を設立したアイルランドをはじめ、イギリスやフランス、カナダ、韓国などが休眠預金を活用した事業を展開しています。
国や地方公共団体による従来の公的制度では対応が困難な社会の諸課題に、民間の創意工夫を活かし、機動的かつ柔軟な力で解決を進めていくことが期待されています。指定活用団体であるJANPIAとJANPIAが公募選定する資金分配団体、またその資金分配団体が公募で選定する実行団体の三層構造になっており、これらの三者が「連携」し事業を進めていく点が他国にはないユニークな仕組みです。

Q.JANPIAはどのような役割になるのでしょうか?

JANPIAは、公募によって内閣総理大臣から指定を受けた指定活用団体

JANPIAロゴ

金融機関から預金保険機構に移管された休眠預金のうち、事業計画書に基づいた金額がJANPIAに交付されます。JANPIAから複数の資金分配団体に資金が助成され、資金分配団体からさらに各地のNPOなどの民間公益活動を行う実行団体に資金が助成されます。図を見ていただくと、JANPIAの役割がわかるでしょう。具体的には以下の10のミッションを担っています。

(1)社会の優先課題を提示

我が国における社会の諸課題を分析し、優先的に解決すべき課題を提示する。

(2)資金支援

資金分配団体及び民間公益活動を行う実行団体に対し、最適な資金支援を行う。

(3)インキュベーター・アクセラレーター

社会の諸課題の解決に挑戦する担い手を支えるインキュベーター(事業が軌道に乗るまでの間、必要な経営支援等を行う主体)及びアクセラレーター(事業の成長を加速化させるために必要な支援を行う主体)の役割を担う。

(4)伴走型支援

必要に応じ、外部の団体や専門家とも連携しつつ資金分配団体に対し非資金的支援を伴走型で行う。

(5)革新的手法の普及促進

民間の創意・工夫が引き出されるような支援を行うことで、社会の諸課題を解決するための革新的な手法の開発を促進し、普及させる。

(6)監督

民間公益活動に係る事業が適正に遂行されるよう、資金分配団体及び民間公益活動を行う実行団体を監督する。

(7)活動の広報、制度への参画の促進

休眠預金等に係る資金の活用状況や成果等について積極的に公開、周知・広報することを通じ、本制度への国民の理解を得るよう努めるとともに、多様な民間の団体等の一層の参画を促す。

(8)民間公益活動全体の把握

資金分配団体の活動状況の分析を通して、民間公益活動全体の状況を把握する。

(9)事例の分析と活動への反映

地域・分野等ごとの実情を踏まえつつ、集積された成功事例や失敗事例を横断的かつ具体的に分析し、また諸外国の事例にも目を配り、その結果を活動の現場に反映させ、世界的先例を作る。

(10)民間公益活動の担い手の自立化のための環境整備

民間公益活動の担い手が必要な資金を自立的に調達できるために必要な環境整備(クラウドファンディングや事業化など)を進め、もって市場の発展を促す。

休眠預金等の活用の流れ

三層構造の中で資金分配団体という中間支援組織を配置する仕組みによって、資金の助成元であるJANPIAの肥大化を防ぎ、全国各地の活動や細分化された専門性の高い公益活動にも助成が行き届くようになっています。
JANPIAは、経団連(一般社団法人 日本経済団体連合会)が主導して設立した組織です。民間企業の出身者のみならず、非営利組織や行政、またコンサルタントなど多様な人材が集まっており、それらの組織の中で培ったさまざまな知識や経験・ノウハウを活かして、先ほど挙げた優先的に解決すべき3つの社会課題を解決するために、4つの助成事業を行っています。

草の根活動支援事業

●全国各地で地域に根差して従来から活動を展開している活動の拡大、成果の向上を目指す。

●地域や分野ごとの多様性に応じて本制度が十分に活用されるように、全国枠と地域枠に分けて選定。

ーーーーー

ソーシャルビジネス形成支援事業

●革新的事業で社会の諸課題の解決を図るビジネスモデルの創出と推進を目指す。

●社会的インパクトと収益性を両立する事業のモデルの確立を重視。

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イノベーション企画支援事業

●従来の枠を超えた革新的な手法の開発、普及・実装に挑戦することにより社会における大きな変革(ソーシャル・イノベーション)の創出を目指す(例:技術を活用した新手法、コレクティブ・インパクトの推進等)。

●社会的インパクトの最大化を重視。

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災害支援事業

●大規模な自然災害等により、長期にわたり困難を強いられる地域とその住民に対する支援活動を実施するNPO等を支援する団体を助成。

※災害支援事業は3つのカテゴリを設定。詳細は公募要領を参照。

Q.資金分配団体にはどんなところが指定されているのでしょうか? その役割はどのようなものでしょうか?

民間公益活動の実行団体への助成などを行う団体

資金分配団体は、民間公益活動の実行団体であるNPOなどに対して資金助成や活動支援などを行う団体です。多くはコミュニティ財団、全国規模の助成財団、特定の社会課題の解決を担う全国規模の団体、また中間支援組織などです。資金分配団体は、「子どもや若者の支援」「生活困窮者の支援」「地域活性化の支援」における優先的に解決すべき社会の諸課題を踏まえ、地域や分野ごとの実情や課題を分析し、案件の発掘や形成を行い、その課題の解決のための「包括的な支援プログラム」を企画・設計します。それを基に実行団体を公募し選定します。

さらに、資金分配団体には、実行団体が活動を円滑に実施できるようその事業支援や基盤強化に向けた支援を伴走型で実施することも求められます。また安定的な資金獲得を支援するといった役割も求められます。また、すべての団体が社会的インパクト評価を、自己評価を基本に実施することになっています。

資金分配団体にてこれらの幅広い活動や実行団体への支援を伴走型で実施するためには中核となる人材が不可欠です。「プログラム・オフィサー(PO)」と呼ばれる人材です。これらのPOの育成・配置が欠かせません。実際にはPOがこれらの広範囲な活動を進めるのは難しいので、POには外部の専門家や支援者などのネットワークを活かすコーディネーター役が期待されます。JANPIAでは、POの確保や育成のための事業費とは別枠で人件費や活動費、また研修などの支援も行っており、資金分配団体の基盤強化支援も実施しています。

Q.休眠預金が原資の資金が分配されて活用する実行団体とはどんな団体で、どんな活動をしていますか?

社会的に解決すべき優先課題に取り組むNPOなど、公益活動をしている団体

例えば、地域の生活困難な家庭の子どもに食事を提供する「子ども食堂」の運営を行っている団体、児童養護施設出身者の就労をサポートする団体、地域の農業を活性化させる新しいビジネスモデルづくりと雇用促進を行う団体など、3つの社会的優先課題の解決に取り組む民間公益活動を担う団体が該当します。

資金分配団体が公募する条件に当てはまる活動をしているまたはする予定の団体で、所定の手続きを踏まえて選定されると、資金分配団体より助成金が支給されます。助成金は資金提供契約に定められた時期に基づき前払いを基本としますので資金を確保したうえで事業活動を推進できます。資金分配団体により選ばれた実行団体の助成期間(通常枠)は最長3年間で、その間に新たな資金の獲得や事業の確立など安定した基盤を構築し、助成期間終了後には各団体が自立して事業を継続していけるようになっていることが求められます。新型コロナウイルス対応支援助成〈随時募集〉はコロナ禍で深刻化した社会的弱者などを支援するための事業で実行団体の取り組みは最長1年間となります。

2022年4月時点で、休眠預金等活用制度による助成を受けている実行団体は、累計700団体に達しています。NPOやソーシャルベンチャー、また社会福祉協議会や中間支援組織など多様な団体が制度に参画しています。(※数字について、2022年4月末時点に修正)

Q.休眠預金を活用しているJANPIA、資金分配団体、実行団体について、実際の活動内容を知ることができますか?

各団体の活動状況は、透明性を持って随時公開されます

国民の資産である休眠預金を原資とした資金を活用していますから、その活動内容が皆さんに分かりやすく伝わるよう情報を積極的に公開し、事業成果の可視化も行います。

例えば、JANPIAのウェブサイトでは、資金分配団体の公募に際し、採択された団体名はもちろん申請事業の概要、団体の詳細についても公開されます。さらに公明性・公平性を明らかにするため、応募したものの採択に至らなかった団体も公開されるほか、審査会議の議事情報も見ることができます。
資金分配団体のウェブサイトでも同様に、助成を受ける実行団体の申請内容や活動内容の概要が公開されます。
実行団体は、助成の申請にあたって、社会課題の詳細な分析と課題解決のための事業設計を綿密に行う必要があります。通常枠で助成対象に選ばれた実行団体は、3年間の中間地点(1年半)で事業の実施状況を振り返ります。3年後には、事業を通して社会や受益者等にどんな便益や変化をもたらすことができたかを「成果」として自己評価し、その評価も公開されます。

この「休眠預金活用事業サイト」では、実行団体の取り組みや資金分配団体の活動を紹介するなど、活動の主体となる関係者のみならずそれを取り巻く支援者などの顔も見えるようさまざまな情報を皆さんに発信していきます。
また、助成金の不正利用を防止するため、JANPIAのみならず資金分配団体及び実行団体の役職員や助成事業関係者も対象とした内部通報制度を設けています。定期的な監査のほか、連絡、相談なども随時行い、ひんぱんに対話することで不正の抑止を図っています。

Q.これからのJANPIAの目標や今後の展開などは?

社会課題の具体的な解決と、各団体の基盤強化支援を推進します

社会課題の解決を進める目標としては2つあります。
実際に助成金を活用しているたくさんの実行団体があります。先ずは実行団体による社会的な課題の解決事例、モデル事業を増やしていくことです。その事例を広く一般に発信するとともに、その成果等をしっかり分析し成功要因や失敗要因などを構造的に整理し、知の共有化と共にモデル事業を普及していきます。「休眠預金活用制度によって、多くの課題か解決できてよかった」と実感していただき、制度の理解が一層深まることを目指します。これがひとつめです。

もうひとつは、多様な社会課題の解決のための自律的かつ持続的な仕組み作りに貢献していくための一歩として、民間公益活動の担い手とその支援の担い手の育成を進めていくことです。中心は資金分配団体と実行団体の活動基盤強化支援です。特に資金分配団体には、助成事業の企画から実行までを推進できる人材「プログラム・オフィサー(PO)」が不足しています。PO同士のネットワーク作りや情報共有などを図り、研修などで人材育成を支援してまいります。そして、休眠預金等活用の助成事業に参画する資金分配団体の裾野拡大と共に、連携いただける企業、アカデミア、団体や市民など休眠預金コミュニティへの参画者を広げていきたいと考えます。

JANPIA事務局長

お話はリモートミーティングで伺いました。

休眠預金活用事業は、2018年1月の法律施行から5年間は社会的実験期間です。この制度が成果を生むかどうか、施行から5年後に幅広く見直しすることになっています。たくさんの成果が生まれ、助成事業の重要性が認知されるよう、JANPIAとしても活動を推進していきます。

現在は、休眠預金の活用が助成事業だけですが、休眠預金等活用法では出資や貸し付けも認められています。今後休眠預金活用の幅が広がれば、さらに民間公益活動全体の活性化につながると考えられます。ぜひ、多くの皆さんに関心を持っていただき、「誰ひとり取り残さない持続可能な社会」作りを実現しましょう。

参考情報 リンク先

放置したままの口座はありませんか? 10年たつと「休眠預金」に。 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201907/1.html

長い間、引き出しや預け入れなどの取引がされていない預金口座はありませんか? 10年間取引がない預金は毎年1,200億円(その後、500億円程度は払い戻し)程度発生しています。そこで、その10年間取引のない「休眠預金」を、民間公益活動のために活用する休眠預金等活用法が始まりました。ただし、休眠預金になっても手続きをすれば、預金を引き出すことができます。

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