【資金分配団体からのメッセージ#4】佐賀未来創造基金 山田 健一郎さん

【資金分配団体からのメッセージ#4】佐賀未来創造基金 山田 健一郎さん

現在JANPIAでは「資金分配団体の公募〈通常枠〉」を実施中です。2021年度 資金分配団体の公募〈通常枠〉の申請をご検討中の皆さま向けに、19年度・20年度資金分配団体である公益財団法人 公益財団法人佐賀未来創造基金 理事長 山田 健一郎さんにお話を伺いました。


佐賀未来創造基金 休眠預金活用事業 基礎情報

【採択事業】

■2019年度 通常枠 草の根活動支援事業(地域) 

 【事業名】人口減少と社会包摂型コレクティブインパクト事業-人口減少における3分野の地域包摂型コレクティブインパクト 

■2020年度 緊急支援枠〈初回〉(コンソーシアム申請) 

 <コンソーシアム構成団体>公益財団法人佐賀未来創造基金、一般財団法人未来基金ながさき 

 【事業名】新型コロナ禍における地域包摂型社会の構築-地域で暮ら全ての人の安心と未来をつなぐ 

■2020年度緊急支援枠〈随時募集1次〉(コンソーシアム申請) 

 <コンソーシアム構成団体>公益財団法人佐賀未来創造基金、一般財団法人 日本未来創造公益資本財団、特定非営利活動法人 宮崎文化本舗、一般財団法人 未来基金ながさき、公益財団法人 おおいた共創基金  

 【事業名】新型コロナ禍における緊急被災者支援事業-九州全県の被災者の緊急・復旧・復興支援

休眠預金活用事業に申請した背景を自団体の活動と合わせて教えてください。

当初、佐賀未来創造基金では、2019年度の休眠預金活用事業にはエントリーはしないという方針でしたが、一方で地域の方々と休眠預金等活用審議会専門委員の方を招いての休眠預金活用の勉強会を実施したり、助成先となりうる団体の方へのヒアリング、県内外の中間支援組織の方々との意見交換など、さまざまな議論を重ねました。その結果、金額の規模感や複数年支援など、通常の佐賀未来創造基金で実施している助成だけでは実現できないことをでき、それに加えて評価のことも含めて、自分たちのスキルアップや現場の方々への新たな支援策のチャレンジとなることから、やったほうがよいのではないかという結論になりました。

条件としては、今までやってきた業務内容、ベースとなる助成事業は変えないこと、職員も急激に増やさないこと、加えて、エリアもいきなり広げるのではなく、まずは、佐賀県内をしっかりやっていくこと、解決すべき社会課題は全分野を対象とすることなどを確認し、それでも採択されるのであれば挑戦しようということでチャレンジさせていただきました。

助成事業を開始して1年半が経ちました。自団体や支援先に起こった変化があれば教えてください。

佐賀未来創造基金では、これまでの助成事業のやり方をベースにしながらも、休眠預金活用事業で実施する評価の観点や、ロジックモデル等を使い3年から5年後くらいの中長期でのビジョンを立てていくというのは、今までなかったチャレンジとなりました。自団体が成長するための変化や、地域への波及効果を意識しながらやっていましたので、そのチャレンジの中で「変化のきざし」が見えてきた一年半だったと思います。

また、コロナ禍での助成事業でもあったので、外的変化に対応するため、「生活困窮者の方の増加に対応するための生活困窮者と空き家をつなげるマッチング」や、「発達障がいの方々への学習支援を就学前からの支援を仕組化するアプローチ」など新たな動きも出てきました。今までになかったような「地域の中での社会課題解決へのチャレンジ」を新たな担い手の方々と、私たちと実行団体、JANPIA含め、一緒にやることができた一年半でもありました。休眠預金の活用を通じて、地域の持続可能性に少しずつ変化が見えてきた状況です。

事業統括者として、よかったこと、苦労していることはどんなことがありますか。

休眠預金活用事業の業務改善に向けては資金分配団体の有志とJANPIAで色々と話し合いをしていただいているところではあるのですが、事務手続きなど若干業務過多になっているところもあります。しかし、全体の業務の見直しの機会に恵まれ、大変であるけれど、ある意味よかったと感じています。

事務手続きや評価など、必要であるけどまだまだ工数がかかっている業務の意義や必要性・活かし方をどう実行団体に伝えていくかなど、POとしての伴走支援の方法を、いろいろと検討しながらチャレンジしているというのが現状です。

また、実行団体さんとの関係性も事業実施期間が最大3年という長期間でしっかり関わっていくプログラムなので、今取り組もうとしていることの確認をはじめ、今後の目標を達成していくために必要なことについても、我々も一緒になって考えています。大変ではありますが、「持続可能な地域づくりにどう近付いていけるか」について、実行団体さんと共にチャレンジできていることが、よかったことだと感じています。

休眠預金を活用する前後で、地域からの反応に変化はありましたか。

CSO(市民社会組織)の方々はじめ行政の方々、なにより企業の方々に関しては、休眠預金を活用したことで、信頼と期待は以前より増してきていると感じています。特に企業については、よりアプローチしやすくなりました。休眠預金の活用は、社会全体としての認知度もあるので、社会課題を解決していくための企業の役割や立ち位置、SDGsへの取り組みを引き出すいい機会として活用し、戦略的に使いこなしていきたいとも考えています。

佐賀未来創造基金としては、「通常の助成事業」と「休眠預金活用事業」とでやっていること自体はあまり変わりませんし、休眠預金活用事業は、いい意味で道具の一つだと考えています。しっかりと使いこなしながら、そもそもの地域資源の循環・活用、地域の巻き込みなどに、違った角度からチャレンジできるということに、ありがたさを感じています。

休眠預金を活用することがきっかけで、連携の拡がりはありましたか。

現在、「2019年度通常枠」、「2020年度緊急支援枠」の〈初回〉と〈随時募集1次〉で採択されています。
当初、「2019年度通常枠」では佐賀県内の地域に共通的な課題の解決への取り組みを行い、その取り組みをモデル化することで九州全体に広げ、つなげていくということを主眼にやってきました。しかし、コロナの影響を受け、その動きが若干変化して加速しているというのが現状です。

具体的には「2020年度緊急支援枠〈初回〉」では、長崎と佐賀でコンソーシアムを組んでと、<多文化共生における外国人やマイノリティの方々への緊急支援>を行っています。「2020年度緊急支援枠 〈随時募集1次〉」では、九州5県で連携してコロナ禍における災害対策を連携してやっています。

これまでも中間支援組織やコミュニティ財団、ほかの助成機関との連携として、九州ブロック単位での会議や勉強会、財団の設立支援などをやってきました。そのような形で連携していた団体さんと、一蓮托生となり、具体的に一緒に仕事をしている状況になってきているというのは新しい動きですし、休眠預金活用事業でしかやれなかったことだと思っています。

佐賀未来創造基金 山田さんのインタビューの様子

休眠預金活用事業を経て、3年後・5年後にどのような社会にしていきたいですか。

休眠預金活用事業のチャンスをいただいておりますが、これは「梃子(てこ)」だと思っています。佐賀県はじめ、九州のそれぞれの地域で一緒になってチャレンジして、SDGsのゴールにも重なる目標の「誰ひとり取り残さない地域社会」へのきっかけや土台づくりをこの3年・5年で実現していきたいと考えています。

また、コロナのように想定していないことや災害がこれからも起こると考えています。そうした課題に一緒に立ち向かっていく仲間を、地域の中で、そして全国に広げていくきっかけに、この休眠預金活用事業がなればいいなと思います。そうなれば、事業そのものが良かった、悪かったという話だけではなく、地域の担い手やソーシャルセクターの仲間が増えていき、その先に持続可能な地域社会が広がっていくと感じています。

申請をご検討の団体の皆さんに、メッセージをお願いします。

休眠預金活用に関して、今でも様々な議論があるのは承知していますが、私たち佐賀未来創造基金としては、あくまでも地域を応援していく中で必要な支援策の一つとして休眠預金を活用させていただいています。同時に、休眠預金の活用は地域社会を変える大きな外的要因のひとつであることは間違いないと思いながら、この事業にチャレンジしています。

休眠預金は意思のないお金ともいわれますが、お金そのものには色はつかないからこそ、ソーシャルセクター全体で最大限に活用し、そこに意味をつけること、すなわち「助成先で色が付き、花が咲いて、地域が変わっていく」ということを実現することが求められているのだと思います。

また、国民・市民のためにあるこの制度そのものをよりよく改善していくことも、休眠預金活用事業にチャレンジしている我々がやっていくことなんだと思っています。そのためにも、地域の方々はもちろんのこと、JANPIAや他団体の皆さんとも対話し、チャレンジできる土壌を作っていくこと、チャレンジして地域をよりよくするお金にしていくことが大事なんだと思います。

休眠預金の活用は、誰もやったことがないことなので、答えはないと思っています。だからこそ、行政だけでは解決できない課題解決の担い手の育成や資金循環の環境整備を通して、持続可能な仕組みづくりをしていくことが大切です。
それぞれの地域で実践しながら、制度そのものも改善し、よりよい地域社会をつくっていくためには仲間が必要です。一緒にチャレンジできる仲間が増えていけばと思っております。

〈このインタビューは、YouTubeで視聴可能です! 〉

※動画では時間の関係でカットとなったお話も、記事に含んでいます。
※この動画は公募説明会で上映したものです。

(取材日:2021年5月7日)

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▼「2021年度 資金分配団体の公募〈通常枠〉」の情報はこちらから▼

休眠預金等活用法に基づく資金分配団体の公募〈通常枠〉|JANPIA

https://www.janpia.or.jp/koubo/2021/

2021年度資金分配団体の公募〈通常枠〉公募要領のページです。

▲申請をご検討中の皆さんは、ぜひ個別相談もご活用ください!

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【本記事に関する問い合わせ先】JANPIA 企画広報部 info@janpia.or.jp

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